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ベロテロのご紹介

今回はヒアルロン酸注射の際にとても活躍するヒアルロン酸製剤「ベロテロ」をご紹介します。ベロテロは日本では長らくエセリスというブランド名で親しまれていました。元々、スイスのアンテイス社(ANTEIS)が同一商品を、アジア向けブランドとしてエセリス、欧米向けとしてベロテロという名称で流通させていました。アンテイスがドイツのメルツ社(MERZ)と吸収合併されたことを機にベロテロブランドに統一されました。
ベロテロ
当院でもエセリス時代から使用しています。

ベロテロは、レスチレンを第一世代ヒアルロン酸とする分類だと第三世代のヒアルロン酸になります(ハイラフォームを第一世代とする分類では第四世代)。ずばりその特徴を一言で表すと、「凝集多重密度マトリックス」構造を持つヒアルロン酸だということ。

凝集多重密度マトリックス、とても難解な言葉が出てきました。恐らくベロテロシリーズを使用している医師の中でもしっかりと理解している人はほとんどいないんじゃないでしょうか。はっきり言って私も何となくしか理解できないのですが、業者から配布される資料を元に解説してみたいと思います。

凝集多重密度マトリックスって何?

凝集多重密度マトリックスの元々の英語はcohesive polydensified matrix(CPM)です。「cohesive=凝集性、粘着性」「polydensified=多重密度化」「matrix=マトリックス、構造」です。ここではpolydensifiedという言葉がポイントです。ベロテロ以外のほとんどのヒアルロン酸は「monodensified=単一密度の」ヒアルロン酸です。monodensifiedなヒアルロン酸(単一密度のヒアルロン酸)は以下の3つのステップにより作られます。
単一密度ヒアルロン酸の作成ステップ
純粋なヒアルロン酸分子を規則正しく線状に並べて架橋剤(BDDE)で第一時架橋を行います。これで単一密度ヒアルロン酸が作成されますが、これらの工程は20年以上前に特許化された技術で、ほとんどの注入用ヒアルロン酸製剤に使用されている技術です。ベロテロではここからさらに2つのステップを加え、単一密度から多重密度化していきます。
多重密度化のステップ
第一次架橋されたヒアルロン酸を引き伸ばし、ヒアルロン酸をさらに加えて第二次架橋を行います。こうすることで架橋密度の異なる部位を有するヒアルロン酸が生まれます。複数の密度を有するということからpolydensified=多重密度化というわけです。この多重密度化されたヒアルロン酸の作成技術はメルツ社が特許を取得しており、「dynamic cross-linking technology(DCLT)」と呼ばれています。ではなぜ、多重密度化するのかというと、高密度部分はヒアルロン酸が分解されにくく長期持続性を担うのに対し、低密度部分は柔らかく注入しやすさを担うという、いいとこ取りをするためです。

ただし、上記の説明はあくまでメーカーが言っているストーリーであって、果たして本当にそうなのかなという疑問は沸きます。では、ベロテロの具体的なデータを示していきましょう。

均質性

各種ヒアルロン酸をまとまりとして見たときの視覚的な情報が次です。
ベロテロの完全に均質なイメージ
一番右がベロテロ、左の二つは他ヒアルロン酸ですが、確かにベロテロは均質性の高いヒアルロン酸だということが視覚的にわかります。実際に使ってみるとわかりますが、確かになじみはとても良く、他のヒアルロン酸と比べてもなじみの良さは一番だと思います。

凝集性

次に、凝集性の情報です。
ベロテロの凝集性の高さ
同様に一番右がベロテロ、左の二つは他ヒアルロン酸です。5cm引き伸ばしてもヒアルロン酸ゲルがちぎれません。凝集性が高く拡散しにくいヒアルロン酸だということがわかります。

組織像

次は、ヒアルロン酸を真皮層に注入したときの組織像です。
ベロテロの均一な真皮層への広がり
左から、コントロール(生理食塩水)、ベロテロ、他のヒアルロン酸1、他のヒアルロン酸2です。真皮層の透明な部分がヒアルロン酸ですが、この組織像を見る限り確かにベロテロは他のヒアルロン酸よりも均質に真皮層に広がっていっています。つまりより自然な仕上がりが期待できます。

不純物

次に、製品に含まれる不純物の量を示します。
ベロテロの不純物の少なさ
現在のヒアルロン酸製剤は非動物性ですので、細菌から作られます。そのため、製造過程でヒアルロン酸を純粋化しますが、どうしても細菌由来のタンパク質や毒素が極めて微量含まれることになります。この不純物はアレルギーなどの原因になり得るため、少なければ少ないほど良いわけです。上記の表の一番右がベロテロです。確かに他社ヒアルロン酸と比べて不純物は少ないようです。

色々な側面からベロテロのデータを見てきましたが、実際に治療に使ったらどうなのかと言うところが気になるところだと思います。ベロテロをエセリス時代から含めて10年以上使っている経験からすると、肌なじみは非常に良いが効果の持続という点で他のヒアルロン酸より劣るという印象です。やはり実際に治療を受ける立場からすると、効果の持続性は重要な点だと思います。ベロテロシリーズにはベロテロソフト、ベロテロバランス、ベロテロインテンス、ベロテロボリューム、ベロテロハイドロ(非架橋)の5つのラインナップがあります。ベロテロソフトは目の周りの小じわなど、皮膚の非常に薄い部位に使用してもボコボコすることなくきれいに肌になじみ、他のヒアルロン酸では代替できない利点があります。それと比べると、ベロテロソフト以外のものについてはどうしてもこれを使わないとしっくりこないという用途がなく、他より短い効果の持続期間のことを考えると、あえてそれを選選択する理由に乏しいかなと思います。そのためベロテロシリーズの中で当院が採用しているヒアルロン酸はベロテロソフトのみとしています。

監修医師

竹内 孝基 医師

エースクリニック理事長

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