ボトックス注射後の代償性発汗について
注射したところの汗は止まっても、他の部位からその分汗が出てしまう!そんなことを耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
今回はそもそも汗はどうして出るのか、そして施術後に気になる代償性(だいしょうせい)発汗について説明していきたいと思います。
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汗はなぜ出るの?
全身をおおう体毛をもつ動物達は、保温効果や細菌・紫外線など外部の刺激から肌を守る役目がありますが、体温が上がりすぎる危険が常にあります。
しかし、人間は進化の過程で体毛が邪魔なモノとなったのでほとんどの部位で無くなりました。
その代わりに、熱を外に逃がす効果にすぐれた「発汗」という仕組みが発達しました。
体温調節を担っているのは、脳の視床下部という部位なのですが、この部位が体温上昇を感じると、汗腺に汗を出しましょう!という指令を出します。
また、緊張や興奮といった精神的なものがきっかけとなって、汗が出ることがあります。
この場合は、おもに手のひらや足のうら、ワキでどっと汗が出るのが特徴です。
自分の意志で汗をコントロールすることはできません。
汗が出るのはどこから?
汗腺には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、それぞれに汗の性質や汗を出す仕組みが異なります。
エクリン腺は全身のほとんどに分布しています。主に体温調節のために汗を出す汗腺で、分泌される汗は透明でさらっとしています。
一方、アポクリン腺はカラダの限られた部分にあり、特にワキの下に多く分布しています。
アポクリン腺から出る汗は白く濁っていて、脂質やタンパク質などニオイのもととなる成分を多く含んでいます。
また、ワキはエクリン腺とアポクリン腺が共存し、温熱性発汗と精神性発汗が両方起こる特殊な場所です。
代償性発汗とは?
ある部位の発汗を止めることによって、その部位の発汗の身代わりになるかのように他の部位の発汗が増えることを、代償性発汗と言います。
発汗のうち、温熱発汗は体温を調節するために行われる作用で、この機能を補うために他の部位からの発汗が増えてしまうと思われがちですが、
実際は発汗を止めた部位の汗がそのまま他の部位に移行するわけではなく、温熱刺激により、より低い温度でも発汗しやすくなってしまったり、発汗量が増えたりしたと考えられています。
治療後にどれくらいの頻度で起こるの??
汗を止める治療では、代償性発汗はつきものとされています。
手術ではないボトックス注射でも起こることがあります。
ボトックスの添付文書に臨床試験のデータが記されていますが、
それによるとワキのボトックス注射後に3%程度で代償性発汗が起きたと記載されています。
しかし、実際に当院でアンケートを行った結果、
それを上回る多くの患者様が代償性発汗を自覚していることが分かりました。
代償性発汗の感じ方にも大小、個人差がありますが、重症性は無視した場合、些細なものも含めると、
直近3か月のアンケート調査では27/49件、つまり半数以上の人が代償性発汗を自覚していることが分かりました。
代償性発汗が生じる部位はどこ?つらいの??
代償性発汗を感じた部位で、一番多かったのが頭皮や顔で、約60%でした。
次に多かったのが背中の約20%、その次に胸の約10%でした。
その他、手のひら、足の裏、腹部、太ももなどを訴えた方が若干名いらっしゃいました。
こうやって聞くと、「どこかに代償性発汗が現れるなら治療する意味って有るのかな?」と思ってしまいそうですね。
しかし、このアンケートで分かったもう一つのことが、
仮に代償性発汗を感じても、それにより困ったという人はいなかったということでした。
まとめ
汗の出る仕組みと、ボトックス注射後の代償性発汗について解説してきました。
ボトックス注射によってその後起こるの代償性発汗は医学的な臨床試験におけるデータは少ないですが、実際に感じてしまう患者様は想像以上に多いことが分かりました。
しかし、困るほどではなく、ボトックス注射をする前と比べた時、治療をしないより治療を行った方が良いと判断されています。
当院では施術後の経過もサポートしながら、アンケート調査を行うなど常に改善を求め、より良い医療を提供できるように努力しております。
ご不安なことがあればなんでも相談してください。