後天性真皮メラノサイトーシスの治療
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後天性真皮メラノサイトーシスとはどんなシミ?
後天性真皮メラノサイトーシスと言う難しい名前のシミがあります。名前が長くて言いづらいので、通常ADM(Aquired Dermal Melanocytosisの略、以下ADM)と呼んでいます。いずれにせよ一般の方はほとんど聞いたことがない名前かと思います。しかし、このシミは決して稀なシミはありません。日常診療でも割としょっちゅう見かけます。
ADMは、典型的な例では、頬骨のあたりに小斑点状に分布します。色味は灰褐色~灰紫色と形容されます。メラニンが真皮層にあるため、表皮にある場合と比べると、輪郭が少しぼやけて青みがかってくるわけです。ADMは別名、遅発性太田母斑様色素斑と言われることもあり、実はアザに近いシミと考えられています。
後天性真皮メラノサイトーシスの治療方法
ADMの治療はピコ秒レーザーやナノ秒レーザーを使用する以外に他ありません。それ以外の治療は残念ながら全く効果はありません。
ピコ秒レーザー
ADMに対する唯一の治療法はピコ秒レーザー(もしくはナノ秒レーザー)です。ADMのメラニンは真皮層に存在するため、ピークパワーの高い強力なレーザーでなければ破壊することができないためです。
老人性色素斑にピコ秒レーザーを照射すると、表皮が痂皮化し、その痂皮がはがれ落ちると同時にシミも一緒にはがれ落ちます。しかし、ADMの場合、このような経過とは全く異なります。ADMにピコ秒レーザーを照射すると、表皮が痂皮化する場合としない場合があります。仮に痂皮ができたとしても、痂皮がはがれ落ちるのと一緒にシミがはがれ落ちることはありません。レーザー照射前とほとんど変わらないでしょう。むしろ、二次的に生じる炎症後色素沈着により、一時的にせよ元のシミの状態より濃くなることが普通です。
というのは、ADMの場合、メラニンは表皮にあるのではなく、真皮層にあるため、表皮が痂皮化してはがれても真皮のメラニンははがれ落ちないのです。ただし、レーザーの作用により真皮内のメラニンは破壊されているためマクロファージなどの食細胞に捕食されて徐々に除去されるので、その後時間の経過とともにADMは薄くなっていきます。このプロセスはゆっくり進むため、レーザーの刺激により炎症後色素沈着が生じた場合は、元のADMの色(真皮内メラニン)に炎症後色素沈着の色(表皮内メラニン)が重なって一時的に元より濃くなってしまうのです。
もちろん色素沈着はゆっくりと引いていくので、最終的にはADMの色は薄くなります。そしてレーザー照射を数回繰り返すことによりADMを除去することができるわけです。
ただし注意点として、ADMがある女性の場合、肝斑を合併しているケースが多々見られます。おそらくこれはADMを隠そうとして念入りにお化粧をされるようになり、その摩擦刺激により肝斑が出てきてしまうのではないかと思います。ADMも肝斑も頬骨の張ったところにできやすいので、これらのシミは重なりあって存在してしまいます。このような状態でADMの治療を優先させてしまうと、肝斑を悪化させてしまうばかりか、レーザー光がADMまで届かないため効果も悪くなってしまいます。そのため、ADM+肝斑というような場合はまずは肝斑の治療を優先して行った方が良いでしょう。