老人性色素斑の治療
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老人性色素斑とはどんなシミ?
老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)は男女問わず多くみられる最もありふれたシミで、シミ取り治療を希望されクリニックを訪れる方の約6割はこのシミであると言われています。普通シミと聞いて思い浮かべるものは老人性色素斑だと言って良いでしょう。
老人性とありますが、「老人性色素斑あるけど私は老人じゃないわよ!」と思わないでください。このシミは決して老人のみにできるものではありません。20代後半くらいから見られ始め、40代では6割、50代で8割、80代以上ではほぼ全員に生じると言われています。つまり、ほとんどの老人に見られる、中年期以降結構な割合でできますよ、というのが老人性色素斑です。
特徴としては、輪郭がはっきりしていて、形は円形あるいは類円形(丸っこい形)でときに不整形、大きさは点状の小さいものから硬貨大の大きいものまで様々あり、色調も淡いものから濃いものまであるということが挙げられます。
老人性色素斑の原因は紫外線で、紫外線を浴びる場所であればどこにでもできます。紫外線を浴びやすい場所は露出しやすいところ、つまり顔、手、前腕、デコルテですので、これらの部位に老人性色素斑ができることが多いです。
老人性色素斑の治療方法
老人性色素斑に対する治療はピコ秒レーザーやナノ秒レーザーが基本になります。これはこれらの治療が根治を目指せる治療であるからです。ただし、レーザー照射部位にはかさぶたができるため、かさぶたを避けたい場合はIPL(フォト治療)やレーザーフェイシャルを行うと良いでしょう。また、個々のケースでは他の治療法を選択することもあります。
状況 | 治療方法 |
---|---|
基本となる治療 | ピコ秒レーザー |
ナノ秒レーザー | |
かさぶたをつくりたくない場合 | IPL(フォト治療) |
レーザーフェイシャル) | |
細かなシミが無数にある場合 | フラクセル3 |
シミだらけの場合 (肌の状態が悪い場合) |
トレチノイン (ゼオスキンヘルス) |
ピコ秒レーザー
老人性色素斑を治療するにあたり最も推奨される治療法はピコ秒レーザーやナノ秒レーザーです。これらのレーザーによる老人性色素斑の治療は根治性が高く、また安全性も高い治療であるからです。
ピコ秒レーザーのパルス幅(照射時間)はピコ秒(1兆分の1秒)単位と非常に短く、メラニンが含まれるメラノゾームを選択的に破壊することが可能です。レーザー光を皮膚に照射したことによるダメージはメラノゾームという細胞内小器官にとどまるため、皮膚の健常な細胞にダメージを与えません。
老人性色素斑にピコ秒レーザーを照射すると、ただちに病変部が白く変色します(IWP:immediate whitening phenomenon)。その後数分ほどで逆に黒っぽくなりかさぶた状になります。それから1週間ほどで自然に痂皮が脱落し、痂皮と一緒に色素斑もはがれ落ちます。痂皮がはがれた後は通常皮膚は淡紅色をしていますが、徐々に落ち着いてきます。ただし治療後1ヶ月くらいすると約30%の人に炎症後色素沈着が生じ、再びシミが再燃してきたように見えます。この炎症後色素沈着は約半年くらいの経過で徐々に引いていきます。
レーザーフェイシャル
レーザーフェイシャルで使用されるパルス幅は通常ミリ秒(千分の1秒)単位です。人間にとってはかなり短い時間ですが、ピコ秒レーザー(1兆分の1秒)に比較すると十億倍の長さになります。このパルス幅だと、高いピークパワーが得られないため、濃いシミを薄くする作用はありますが、シミそのものを消し去ることはできません。一方、痂皮形成はピコ秒レーザーに比べるとできないかできてもごく軽度なため、ダウンタイムのないマイルドな治療を希望される方にはおすすめしています。
IPL(フォト治療)
この治療は強いパルス光をお顔全体に照射していくものです。パルス幅はミリ秒単位(千分の1秒)であり、老人性色素斑に対する効果は基本的にレーザーフェイシャルと同じです。つまり、濃いシミを薄くする作用はありますが、シミそのものを消し去ることはできません。反面、IPLのパルス光はレーザーのように単一波長の光線ではなく多様な波長の光を含んでいるため、メラニン以外の様々なものにも反応し、シミの改善以外のリジュビネーション効果も期待できます。また、RF(高周波)も同時に照射できる器械も多く、皮膚の引き締め効果など、幅広い美顔目的で使用されます。
フラクセル3
非常に小さな穴を皮膚にたくさん開けていくレーザーです。穴が開いたところの表皮が削り取られることになるため、老人性色素斑の改善効果が望めます。特にそばかす様の小さな老人性色素斑が無数にできているようなケースにはおすすめです。肌全体のリジュビネーション効果もあります。
トレチノイン
皮膚のターンオーバーを促進し表皮を剥離する作用があるので老人性色素斑の治療にも有効です。ハイドロキノンと併用することが多いです。治療期間が1クール3~4か月と長い点、治療開始時は皮膚がボロボロとむけてくる点などから、単に老人性色素斑の治療を行う場合に使用するというより、ピコ秒レーザーやナノ秒レーザーを使えないような肝斑に老人性色素斑を合併しているような肌の状態が悪いケースなどに適用しています。また、トレチノインは単にシミの改善にとどまらず肌全体のリジュビネーション効果もあるため、肌そのものを若返らせたい方にもおすすめです。